
平成22年1月24日に放映されたNHKの番組「ダーウィンが来た! 生きもの新伝説」では、「村で急増 ふしぎなタカ」と題し、大潟村のチュウヒの生態が紹介されました。日本第2の湖を干拓して誕生した大潟村の自然環境が、チュウヒにとってとてもマッチしていたのでしょう。ここでは、大潟村のチュウヒについて紹介いたします。
なお、大潟村では村内全域でチュウヒを見ることができます。
1. 分類・学名
タカ科 チュウヒ
英名 Eastern Marsh Harrier
学名 Circus Spilonotus
猛禽類は一般に崖地や樹上などに営巣し、繁殖しますが、チュウヒはアシ(ヨシ)原などの湿原や湿地性草原など、地上で繁殖する珍しい貴重なタカ類です。アシ原の上を低く飛びながら、急降下してネズミや小鳥、カエルなどを補食します。
2.分布
ユーラシア大陸中部(ロシア極東域や中国東北部、サハリンなど)で繁殖します。日本では本州中部以北で局所的に少数繁殖(北海道、秋田県、石川県、兵庫県、三重県)しています。しかし、繁殖環境の悪化によりかなり限定的になってきました。2006年のチュウヒサミットで確認できた繁殖しているつがい数は、30〜40であろうとされましたが、現在では、日本野鳥の会自然保護室の浦達也氏によれば、全国で約50つがいと推定されるとのことです。繁殖地では一部留鳥で、通年生息しますが、国内では多くは冬鳥として観察されます。個体の多くは大陸から主に本州以南に渡ってきます。
3. 生息地
湿性の水田やヨシ原、干拓地のヨシ原、湖沼べりの大きいヨシ原、河口、海 岸、原野など草原状のヨシ原のある所やその近辺の農耕地に現れます。
営巣地の環境は、ヨシの茂る草原であることから、地表であるが故のディメリットを抱えることになります。野犬やタヌキ、キツネ、イタチなどからの被害(食害)を受けやすくなるわけです。さらには、太陽光を遮る何ものもない状況下での繁殖であることから、熱や紫外線などに弱い雛の成長にとって大きなディメリットを抱えることになります。したがって、巣の中にいる雛を他の動物や厳しい自然環境から守るために親の保護が必要になります。他の動物への威嚇のほか、ときには日傘代わりであり、ときには雨傘代わりであり、ときには風よけである必要があります。特に夏の直射日光下では、常に保護行動をとってやらなければ雛の生死に関わってくることになります。営巣地のメリットとしてたった一つ考えられることは(自然災害から身を守ることができるのは)、湿地性草原ということで、水辺近くに営巣していることにあります。水辺は、他の草原に比し、水分が多くありますから、水が蒸発する際に発生する気化熱により、周囲よりは気温が低くなる可能性があります。また、雛が成長してくれば、自らヨシ原に潜り込み涼をとるようです。そして、親が戻ってくれば、すぐに胸の中に潜り込む行動が見られるそうです。
4. 体の特徴
右上の写真をご覧下さい((有)つばめプロ 平野伸明氏撮影。無断使用を禁じます)。
全長(頭部から尾羽の先まで)は48cm(雄)から58cm(雌)、翼開長(翼を広げたときの長さ)は113cm(雄)から137cm(雌)です。トビ位の大きさですが、トビよりはスマートな灰色です。トビよりは足や尾羽が長く見えます。
雌雄異色。雄は、灰色と白色の体。雌と若鳥は、黄褐色。黄褐色の個体を見る機会が多くなります。飛翔時の下面は、雄は白く、雌や若鳥は黄褐色に見えます。
見た目では、トビとの区別は難しいといってよいでしょう。わずかな違いを見つけることで区別できます。トビの尾羽は先端がくさび形(M形)になっています。なお、トビは高いクロマツなどの樹上に巣を造ります。
5. 飛型
滑空するときはV字形に翼を上げます。風の強い日は、停空飛行(ホバリング)をします。
6. 繁殖
繁殖期は4月から7月。つがい形成期は3月ころで、求愛ディスプレイを行い ます。一夫一妻制をとっています。
巣作りは、雌雄で行います。巣は新規に作りますので、前の年の巣材は使いません。卵数は5〜7個、抱卵日数は約35日、育雛期間は約35日です。抱卵・育雛期間のほとんどは、雌の仕事になります。雄は、盛んに餌を運んできて、巣の中に置いていったり、時には空中で餌渡しをします。繁殖期はつがい毎になわばりを持ち、他のつがいと分散して生活します。排他的な行動はトビ、オオタカ、カラスなどに対して見られます。
7. 巣の大きさ*
巣の外径 平均 85×79cm
巣の厚さ 平均 27.5cm
産座の大きさ 平均直径 23.3cm
産座の深さ 2.5cm
*この巣の大きさについては、ある論文から借用しましたが、調査中です。
8. 近縁種
(1) ヨーロッパチュウヒ
オランダのフレボラント州の鳥に指定されています。日本では観察できません。
(2) ハイイロチュウヒ
日本には冬鳥として現れます。
9. 保全活動
チュウヒは絶滅危惧IB類に分類されています。
なお、絶滅危惧IA類は、IB類の上位に位置する絶滅危惧種ですが、シマフクロウやノグチゲラ、ヤンバルクイナ、シジュウカラガンなどがあげられています。IB類には、チュウヒのほか、オジロワシやイヌワシ、ヤイロチョウ、オオセッカなどがあげられています。
10. 大潟村でのチュウヒ
平成21年度の営巣数は22巣でした。そのうち、繁殖した可能性の高い営巣数は7巣だと思われます。したがって、大潟村の中で観察される生息個体数は、おそらく25〜30羽ではなかろうかと思われます。繁殖期には、多く観察されますが、冬期間は少なくなります。それは、冬期になると餌などが少なくなり、多くは南の方面に移動してゆくことになるからです。一部はそのまま居残るように留まります。
麦畑でのチュウヒの狩りを多く見ました。おそらく、麦畑の中で繁殖している小鳥類やネズミ類が餌となっている可能性が高いのだろうと思います。魚も食べると報告されています。